デビューおめでとう。

デビューおめでとう。
なんて、微塵も思っていないです。いや、微塵も、と言ったら嘘になるのかもしれません。
大好きなあなたが、ずっとずっと望んでいたデビュー。好きな人が目指していたものに触れたことを、一緒に喜んであげたい。喜ぶ姿を見るのは嬉しい。そう思っているから、微塵も、といったらちょっと違うのだと思います。

でも、もう一度書くけれど、あなたのデビューをわたしは、嬉しいと思っていないです。

わたしはあなたに恋しています。苦しいほど恋しています。恋をしてはいけない人に恋してしまったと知っています。
こういうのを、世間的には『リアコ』『ガチ恋』と言うそうです。わたしは、あなたを好きになるまで、こんな感情を知りませんでした。むしろ、馬鹿にしているきらいもありました。どうしてアイドルに恋なんてするんだろう。叶わないのに。アイドルは偶像で、アイドルは崇拝の対象で。そこにアイドルとして存在してくれているだけで奇跡、好きでいることに求める見返りは『見る人すべてを魅了する素晴らしいパフォーマンス』であって、自分個人に対する見返りなんて考えたこともなかったんです。
でもあなたを好きになってから、今まででは考えもしなかった感情が芽生えてしまいました。

『わたしをどうしても見つけて欲しい』

わたし個人を、見つけて欲しい。あなたのメンバーカラーのペンライトを持った、あなただけのために作った名前入りのうちわを持ったわたしを、どうしても見つけて欲しい。そして、わたしを、たった数秒間だけでいいから、愛して欲しい。
わたしは、ファンサを『愛の交換』だと思っています。わたしが持つ大きな愛に、唯一レスポンスをもらえる時間。唯一、愛してもらえる時間。それがたった数秒でも、わたしにとっては幸せな時間。そして、世界一大事な時間。
あなたはよく特技に『ファンサービス』とあげていますね。自分のファンが優先だけれど、遠くの座席や立ち見の人までファンサして自分のファンにしたい。そう言っているのを目にしたことがあります。
その通りで、あなたは本当によくファンサをします。どの現場に行っても、わたしのことを必ずと言っていいほど見つけてくれる。
昔、たまたま日生劇場の二階ロビーに座る女性が言っていた『彼は、本当にどこにいても、絶対見つけてくれるんです』という言葉は、今でも声音まで覚えています。彼女の声は本当に幸せそうで、そして、わたしにとって妬ましくて。

彼女の声はたぶん、引き金でした。

もっと見つけて欲しい、もっと愛して欲しい。
だから、無理してチケットを探した。無理してたくさんの現場に通った。あなたにどうしても見つけてもらいたかったんです。見つけてもらえる確率を上げるには、現場を増やすしかない。
コンサート中は、『ファンサがもらえなかったらどうしよう』なんて考えて、気が気じゃない時もありました。いや、それどころか、コンサートが始まる前から『見つけてもらえなかったらどうしよう』と泣いて苦しむこともありました。そして、気がついたらたくさんのチケットを無理して手に入れていました。
でも、絶対ファンサがないと言っても過言ではない舞台なんかは気が楽で大好きでした。大好きな顔を、大好きなスタイルを、大好きな声を、大好きな歌を、大好きなダンスを、大好きな演技を、大好きなパフォーマンスを、好きなだけ、何も考えずに享受できるから。だから、たとえファンサがもらえない現場でも、ただただ幸せな時間をもらえるから、反動のように行く回数を増やしました。

わたしは、ただひたすら、あなたに愛して欲しかったんです。
でも無理だとわかっているから、分かっているからこそあなたの『ファンサ』に固執した。ただ、それは、あなたに『恋』しているからに他ならなくて。

だから、あなたのデビューなんて、嬉しくない。
あなたデビューが決まる前から、ジャニーズJr.にしてはたくさんのテレビに出ていたけれど、デビューが決まったらさらに増えた。
最後に『あなたの所属するグループだけ』としてあった現場は、明らかにあなたのペンライトの色を持つ女の子の数が増えていた。
苦しくて仕方なかった。幸いにしてその現場は、ファンサをしている姿がなかっただけ安心した。……他のグループがたくさん出演している某現場ではファンサしている姿を天井席で双眼鏡を見ながら見つけて、苦しくて仕方なかったけれど。

どっちにせよ、わたしは、あなたがわたしを見つけてくれないことが苦しいんです。

あなたがわたしを見つけてくれるには、場数を増やすしかない、って増やしてきた。
デビューしたら、コンサート会場のキャパが広くなる。見つけてもらえる確率が低くなる。『ツアー』として各都市をまわったら、実質的に回数も減る。見つけてもらえる確率が低くなる。ツアーは大体一年に一回しかできない。場数が減る。見つけてもらえる確率が低くなる。『ツアー』になったら金銭的、時間的に遠征できない場所も増える。見つけてもらえる確率が低くなる。
あなたに見つけてもらえない。
辛い。

デビューしたら、わたしが最も求めていたものが遠のいていくんです。あなたが最も求めていたもので、わたしの最も求めているものが遠のいていく、なんて、滑稽だね。

わたしは、あなたが望んでいたものを素直に喜べない、ファン失格です。
だから、わたしはあなたのことが本当は好きじゃないんじゃないかって思ったりもして。
わたしが『あなたを好き』というのは、ほとんどアイデンティティ。友人の中では『わたし』=『あなた』なんです。だから、そのアイデンティティが崩れるのが怖いだけなんじゃないのか。
怖い。

それと、金銭面。
無理してあなたにたくさん会ってきた。そのツケが回ってきた。もうあなたに割けるお金は、ほとんどないです。
それなのに、ハイタッチ会がCDについています。当たるかどうかもわからないハイタッチ会の抽選券。わたしは、何枚買えばいいの?何枚買えば当たるの?そう思いながらシングルを何枚か予約して。馬鹿みたいって思いながら、お金がないのが苦しくて、お金を使うことが怖くなって、ご飯も食べれなくなって。
苦しい。

ハイタッチ会。何万人もの人間があなたに触れると思うだけで嫉妬に狂いそうです。当たらなかったらどれだけ絶望することか分からないし、当たったら当たったで、周囲の人間への嫉妬心で気が狂うのではないかと思います。いや、当たらなかった時のハイタッチ会レポとかのツイッターの方がしんどいか。
妬み。

辛い。
怖い。
苦しい。
妬み。

あなたを応援していて、こんなに負の感情を抱いています。

あなたは、『僕のことを好きになってくれたら幸せにします』と言ってくれました。確か、前も言ってたな。
そうね、その通り、わたしあなたにたくさん幸せにしてもらった。

ハイタッチだって、したことある。わざわざ、障害物を乗り越えて、わたしのうちわとペンライトに気づいてハイタッチするために走ってきてくれたのを、今でも鮮明に覚えてる。凄く幸せだった。
たくさんたくさん幸せにしてもらった。好きでいて、あなたの顔、パフォーマンス、考え方、生き方全てが好きで、見ているだけで幸せだった。
それなのにファンサービスをたくさんもらって、ここには書ききれないくらいたくさんもらって、何年もわたしより彼のことを好きでいる歴が長くてもファンサをもらえていない人がいる中、ほんとうに運が良くて……いや、あなたはすごいひとだから、見つけることに長けているひとだから。

自信を持って。あなたは人を幸せにできるひとです。

でも、わたしは不幸です。負の感情に押しつぶされて毎日泣いている、悲しい人間です。

ああ、どうかデビューしないでくれたらと、毎日願っている、醜い人間です。
毎日好きでいるのをやめたいと、その方があなたのためになると、わかっているのに好きでいるのをやめられない、かわいそうな人間です。

このお手紙は、一生あなたに届きません。いや、届かないことを願っています。
インターネットという海に解き放つ以上、可能性がないとはいいきれません。
それでも、このお手紙は、書いて、破いて、捨てて、それで終わり、ってできなかった。
どうしても、この気持ちを吐き出したかった。
どうしてだろう?共感されたい?同情されたい?分かんないな。

最後にあなたへ。
ごめんなさい。
世界一、宇宙一愛しています。

そしてこの悲しいラブレターを読んでくださった、数少ない皆様へ。
どうか、わたしの代わりに破いて捨ててください。

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